オーナーと私達設計者の感性の確認ができたのは、同じくここ静岡県の伊豆市にある弊社の「伊豆アトリエ」をご覧になって頂いたことが全ての始まりだったのかも知れない。オーナーも設計者もそう思っています。
伊豆アトリエは、昭和モダニズムに溢れるヴィンテージ感がたっぷりの空間。経年変化による味わい、朽ち果てるまで続く美しさ…そんな空間に魅力を感じていたオーナー。それもそのはず、彼は古い車やバイク、オーディオを愛する人間だから。逆に今風という流行を追い求めることは恥ずべき行為といった、かなり流行にアンチテーゼ的な部分も持ち合わせている。
外観は極力シンプルに構成した。ガレージハウスとなると外観上のバランスの問題や、音(旧車はバイクなので凄い音なんです)、振動などを考慮して別棟とした。ガレージから直接室内に入れないことがデメリットではあるが、それぐらいの不便さを求めているようにも感じた。
彼自身が手に入れた鋳鉄の門のエントランスから室内に入ると、大きな吹抜けがあり、その下に堂々と鎮座するのは、ベルギー製の薪ストーブ。ダイニングとキッチンは繋がったデザインで、キッチンの延長上に同じように造作したテーブルを設けた。キッチンとテーブルの高さを揃えるため、キッチン側の床を200mm下げてある。
身長の高いオーナー夫婦に合わせてオーダーメイドされたキッチンの天板はブラスト加工したステンレス製。バックキャビネットの扉も特集な塗装を施した。(かなりザラザラ)アイランド型キッチンにとって、コンロの位置が常に問題となるが、今回は壁面側に設けたことにより、料理中の排気もクリーンで、かつ換気フードがアイランド側に無いことによりスッキリとした。
2階は主寝室と子供部屋と、将来もうひとり子供が誕生した時にフレキシブルに対応できるよう収納部屋と吹抜けに面したところに、スタディーコーナーを設け、下の家族の気配を感じながら勉強ができるように計画した。
最後に、予備室のつもりで設けた部屋には、家が誕生して生まれた娘さんがそこに居ます。これからも幸せに過ごして欲しいとそう願っております。
設計監理: アイシーエー・アソシエィツ一級建築士事務所(静岡)撮影: 加納準